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先端医療センター

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研究事業

医療機器の研究開発

MRI及び関連する研究

水素原子などある種の原子核は、磁場の中では、一定の周波数の電磁波を受けるとそのエネルギーを吸収する(共鳴する)性質をもっています。これを磁気共鳴(Magnetic Resonance)といいます。MRI(磁気共鳴撮影、Magnetic Resonance Imaging)は、この性質を利用して、体内の水素原子の核を特定の周波数の電磁波に共鳴させ、その結果出てくる微弱な電磁波を検出し臓器・組織の形状を画像化したり、特徴を測定したりします。また、化合物によって共鳴周波数がわずかに違うので、MRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)という方法を使うと、ある種の物質の量を測定することもできます。

磁場の強さはテスラ(T)という単位で表し、磁場が高いほど信号と雑音の比がよくなります。先端医療センターには、一般の病院に普及している1.5TのMRI装置のほかに、3Tの超高磁場MRI装置があり、より鮮明な画像の撮影や精度の高いMRS測定ができます。さらに、オープン型MRI装置といって、通常のトンネルの形でなく間があいていて、MRI画像をリアルタイムに見ながら処置や手術ができる装置もあり、体への負担を減らし精密にコントロールされた手術方法の開発が進められています。

[先端医療センターのMR装置]
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関連リンク
TRC→先端医療Q&A→先端医療センター→MRI 磁気共鳴画像化法 (千田 道雄 映像医療研究部長)外部リンク
(1)脳機能画像による脳腫瘍と残存機能の術前評価

脳腫瘍を切除する場合に、腫瘍の近くに特定の機能、たとえば手足を動かす命令を出す場所が存在することがあります。このような場合に、脳腫瘍と一緒に機能部位を切除すると、その機能が失われ、麻痺などの後遺障害が生じることがあります。そこで手術前に特定の機能が脳のどこに存在するかをファンクショナルMRI(fMRI)という技術を用いて画像化することによって、切除範囲を限定し、機能障害の発生を極力減らす試みをしています。

[脳に腫瘍がある患者のfMRI画像]
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<図の説明>
脳に腫瘍がある患者のfMRI画像。通常のMRI画像(白黒画像)の上に、fMRIで手足を動かしたときに働いた部位をカラー表示した。脳の腫瘍を生検する予定だったが、fMRIで腫瘍の近くに手を動かす部位があることが分かったので、術後麻痺がおこる可能性が高いと考えられた。結局、生検をせずに放射線治療を行った。
(2)解剖画像や代謝画像(MRS)による加齢性・認知症性病態の診断

急速に進行する人口構成の高齢化に伴って、脳に生じる変化を的確に捉え、今後さらに問題となる認知症などを早期より診断する必要があります。そこで、認知症の早期診断や、その進行と治療効果の評価に、MRIやMRS、PETを活用しています。

[早期のアルツハイマー病患者のMRI画像(左上)、PET画像(左下)、MRSのスペクトル(右)]
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<図の説明>
早期のアルツハイマー病患者のMRI画像(左上)、PET画像(左下)およびMRSのスペクトル(右)。四角に囲んだ部位は後部帯状回と呼ばれるところで、MRI画像では形態的に異常が無いが、PET画像ではブドウ糖代謝が低下しておりはたらきが落ちていることがわかる。MRSではミオイノシトールのピークが相対的に高くなっており、脳組織の変性が示唆される。
(3)MRSによる前立腺がんの診断

前立腺にはクエン酸が多く含まれていますが、がんになるとクエン酸の量が減ってきます。同時にがん組織が産生するコリンという物質の量が増えてきます。そこで超高磁場MRI装置を用いて、前立腺内の各部位ごとにMRSを測定するMRSI(Magnetic Resonance Spectroscopic Imaging)という方法で、このクエン酸とコリンの量の比を測ることによって、前立腺内のクエン酸の量を画像化し、がんとがんでないところとを鑑別する診断を行っています。以前はこのような測定をしようとしますと、直腸からMRIの検出器(コイル)を体内に入れなければなりませんでしたが、当センターでは下図のようなズボン型の検出器を開発して、より患者様にやさしい方法で検査しています。これまでに100例以上の患者様について試験を行ない、現在はこの検査の有用性を確かめるために生体検査の結果との照合を行なっています。

[3T用前立腺コイルを装着]
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<図の説明>
短いズボンのような形をした3T用前立腺コイルを装着したところ。体外から前立腺をきれいに撮像できる。
[健常者のT2強調MRI画像(左)、MRSI法による前立腺内の各位置における代謝物の分布(中)、クエン酸の量の画像(右)]
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<図の説明>
左:健常者のT2強調MRI画像
中:MRSI法による前立腺内の各位置における代謝物の分布。コリン・クレアチン・クエン酸の信号が認められる。クエン酸信号が高いピークを持つ。
右:クエン酸の量の画像。
[前立腺がん場合のT2強調MRI画像(左)、MRSI法による前立腺内の各位置における代謝物の分布(中)、クエン酸の量の画像(右)]
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<図の説明>
左:前立腺がん場合のT2強調MRI画像
中:MRSI法による前立腺内の各位置における代謝物の分布。がんが疑われる部位ではコリン信号がクエン酸信号よりも高いピークを持つ。
右:クエン酸の量の画像。がんが疑われる左側(向って右側)ではクエン酸の量が少ない。
(4)オープン型MR装置によるMRIガイド下の肝腫瘍凝固術

肝臓の腫瘍に針を刺し、MRI画像を見ながら、針の先端から電磁波を出して肝臓のがんを焼いて治す治療を開発しています。当センターでは、この方法を確立し普及させるための技術開発や製品化に取り組んでいます。光学系とMRIを併用して針の位置を求め針が患部に達しているかどうかを正確に割り出す方法や、MRIで温度を測定することによって焼いている範囲を正確に映し出す方法、あるいは針によってMR画像に生じる偽像(アーチファクト)の解析方法などを開発しています。がんは焼き足たりないと再発してしまう一方で、周りの正常な組織まで焼きすぎると血管破裂などを招くおそれがあるため、温度管理は治療を成功させるための重要な情報となります。以前は肝臓のように呼吸で動く臓器は、温度分布の画像化が困難でしたが、当センターではこの問題を解消する技術も開発しました。

[摘出した動物の肝臓に針を刺して電磁波で加温しながら動かした実験のデータ]
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<図の説明>
摘出した動物の肝臓に針を刺して電磁波で加温しながら動かした実験のデータ。加温針(黄矢印)の先端の位置(赤破線)で断面を作成し温度を測定すると(c)、加温点だけが温度が上昇していることがわかる(赤い点として表示)。
[加温針によってMR画像に生じる偽像を電磁気学的解析に基づいて計算した画像]
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<図の説明>
加温針によってMR画像に生じる偽像(アーチファクト)を電磁気学的解析に基づいて計算した画像。右:静磁場の影響のみによる偽像、左:勾配磁場による影響を加えたもの。
(5)MRガイド下集束超音波治療のための温度計測技術

レンズを使って光を集めるようにして、超音波を体内の一点に集中させてがんや良性腫瘍などを治療する、集束超音波治療という治療法があります。この治療では患部の温度を測定したり、熱による組織の変化を観察したりする必要があるため、MRIによる温度測定や組織の画像を頼りにMRIガイド下で治療を行うことが行われます。国内でも子宮筋腫や乳がんの治療が始められています。当センターでは、他の施設と共同で、この集束超音波治療のための、MRI温度測定技術の高度化に取り組んでいます。電磁波加温に対する研究で培った技術・ノウハウを活かし、通常の臨床で使われるトンネル型のガントリーのMRIで、磁場強度の変動や対象臓器の動き・変形があっても温度を測ることのできる方法(自己参照型温度分布画像化法)をはじめとして、この治療法を確立し普及させるための技術開発や製品化に取り組んでいます。最終的には腹部の臓器(肝臓・腎臓など)に対しても治療が行えるようにしたいと考えています。

[自己参照型温度分布画像化法による、集束超音波治療法下の子宮筋腫の温度分布画像]
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<図の説明>
自己参照型温度分布画像化法による、集束超音波治療法下の子宮筋腫の温度分布画像。 右:冠状面、左:横断面における温度上昇の様子。
(6)MR-内視鏡融合システム

内視鏡は体内の様子を観察したり、小さな傷口で治療したりするのに極めて有用な医療器具です。 いろいろなタイプの内視鏡が数多く今日の臨床の現場で使われています。しかし内視鏡はあくまで、内視鏡の視野で直接覗くことができる組織に関する情報を与えてくれるものです。例えば組織の表面に小さな腫瘍が見えたときに、その腫瘍が実際に組織のどこまで浸潤しているものなのか、は知ることができません。一方MRIは病変部の表面情報に関しては内視鏡ほど直接的で鮮明な画像を提供することはできませんが、組織の内部を観察することが可能です。そこで当センターでは内視鏡とMRIを組み合わせたシステムの開発を行い、両者の良いところを併せ持つ新しい診断・治療システムの開発を行なっています。腹部の臓器の低侵襲手術の際にしばしば使われる硬い構造を持つ内視鏡(硬性鏡)や、いわゆる胃カメラのようなやわらかい構造を持つ内視鏡(軟性鏡)がMRIの中で使えるようにすると共に、内視鏡の位置や姿勢をMRIの画像空間内で立体的に捉え、 かつ内視鏡が臨んでいる視野の奥にある組織のMR断層像を内視鏡画像と組み合わせて表示するソフトウエアを作りました。このような内視鏡-MRI融合システムはまだ世界でも実用例がありません。オープン型(0.5T)MRI装置では、硬性鏡と軟性鏡の2種類の内視鏡に対応することが可能です。また3T-MRI装置本体があるシールド室内で、内視鏡術者が内視鏡画像、内視鏡手技のための操作パネル、MR画像、内視鏡画像とMR画像との重ね合わせ画像など、さまざまな情報を確認でき、内視鏡検査・手術を効率的に行える環境構築を進めています。

[MR用硬性内視鏡]
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[MR用軟性内視鏡]
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[3次元MR画像との重ね合わせによる硬性鏡のナビゲーション画像]
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<図の説明>
3次元MR画像との重ね合わせによる硬性鏡のナビゲーション画像。腹腔の中で内視鏡がどのような位置と向きにあるかが3次元画像として分かる。
[動物の食道を用いた実験で得られた軟性鏡視野にある食道壁のMR断層像]
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<図の説明>
動物の食道を用いた実験で得られた軟性鏡視野にある食道壁のMR断層像。軟性鏡では見えない壁組織の内部構造がよく分かる。(オープン型(0.5T)MRIにおいて、内視鏡の外周全域を撮像できるRFコイルで撮像)
[3T-MRI内での内視鏡システムの構成予定図]
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(7)心筋・心血管再生治療評価のためのMRI撮像技術・評価法の開発

再生医療の対象部位として期待されている心臓において、移植された心筋組織がどのような状態であるかを確認することは重要ですが、患者側、医者側からも低侵襲的に行われることが望まれます。この研究では、移植された心筋患部とその周辺組織の状態(形態・機能・代謝・血流など)を観測すること、特に心筋、冠動脈などの血管系をMRIで観測することを目的としています。組織の代謝を観測する上で、MRS(magnetic resonance spectroscopy)は有効な技術であり、動いている心臓を観測するためには高速撮像が必要になります。そこでLSEPSI(Line Scan Echoe Planar Spectroscopic Imaging)という撮像方法を用いて、低侵襲的に評価する方法の開発を行っています。

[健常成人の心臓をMRIで撮像した画像]
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<図の説明>
健常成人の心臓をMRIで撮像した画像。心筋領域にMRSIで観測したい領域を設定し、LSEPSIで代謝状態を観測する。
(8)MR対応の手術用機器の開発

先端医療センター映像医療研究部では、知的クラスター研究事業として、神戸市立中央市民病院脳神経外科、神戸大学工学部及び神戸市機械金属工業会と共同で、オープン型MRを用いてMRモニタ下で脳の生検や手術を行うための機器開発を行いました。その一つ、MR対応頭部固定装置は、患者の頭部をMR装置内に固定し脳に穿刺針を挿入する際にナビゲーションを行うシステムで、神戸市機械金属工業会傘下の企業から製品化されました。

[KBM式MR対応頭部固定装置(特願2003-375723)]
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