現在の治療について(他の治療法)

下肢の偽関節に対する一般的な手術方法としては,髄内釘ずいないていや金属プレートによる再固定術に,骨移植(血管柄けっかんへい付き骨移植も含む)や骨粉砕術こつふんさいじゅつを加える方法がよくおこなわれています。この手術療法と並行して低出力超音波パルス治療をおこなうこともあります。これらの治療により,骨癒合こつゆごうが得られる可能性もありますが,確実な方法とはいえません。さらに,骨癒合が得られるまで何度も手術を繰り返すことになる可能性があります。
また,研究段階の治療法もいくつか報告されていますが,いずれも確立された治療法ではありません。それぞれの方法に一長一短があり,骨癒合が得られる患者さんもいますが,期待される効果の得られない患者さんもいます。

従来の治療法

手術療法 再固定術(髄内釘等)
骨移植(血管柄付き骨移植も含む)
骨粉砕術
非手術療法 低出力超音波パルス治療

研究段階の治療法

細胞移植による骨再生療法 骨髄細胞
成長因子による骨再生療法 BMP-2, FGF-2
炭酸ガス療法 炭酸ガス経皮吸収

臨床研究結果

これまでの非臨床試験(動物実験)では,ヒトのCD34陽性細胞を血管の閉塞したマウスの下肢に筋肉注射(細胞移植)することにより,新しい血管が作りだされ(これを血管再生と呼んでいます),血流が改善することが示されています。また,下肢以外の臓器(心臓)についても,ブタにおける実験では血流が改善し,臓器機能を改善することが示されています。さらにこれまでの動物実験で,ヒトのCD34陽性細胞を骨折したラットに局所投与(細胞移植)することで,新しい血管だけでなく骨も作り出され(これを骨・血管再生と呼んでいます),骨癒合が得られることが示されています。
また,以上の基礎研究成果を踏まえて,神戸大学医学部附属病院および先端医療振興財団では,2009年から本治験と同様の治療法を7名の患者さんに実施し,全ての患者さんに平均16.1週において骨癒合が得られ,その有効性が示唆されました。全7症例のうち1症例において,臨床試験との関連が否定できない重篤な有害事象(子宮頸部高度異形成しきゅうけいぶこうどいけいせい(※3))が発生しましたが,手術により悪性腫瘍ではないことが確認されています。
※3 子宮頸部高度異形成しきゅうけいぶこうどいけいせいとは:膣に近い子宮の細い部分に本来の正常細胞と異なった細胞や細胞配列が乱れる病変(子宮頸部異形成)のうち,その程度が子宮頸がんの前がん病変の状態です。子宮頸部異形成と子宮頸がんの主たる原因は,ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが知られています。


難治性骨折(偽関節)患者を対象とした自家末梢血CD34陽性細胞移植による
骨・血管再生療法に関する第Ⅰ・Ⅱ相試験」 結果

症例数7 名
性別(男/女)6/1
年齢(平均)34 歳 (20~45歳)
骨折部位(大腿骨/脛骨)2/5
細胞移植後12週での骨癒合率71.4 % (5/7)
細胞移植後骨癒合までの期間平均16.1 週 (8~38週)

これらの結果より,ヒトCD34陽性細胞を用いた骨・血管再生治療法は,下肢偽関節に対する新しい治療法になる可能性があると考えています。