すべての生物は細胞という最小単位によって構成され、人間ではその細胞の数は200種類以上、約60兆個あるといわれています。このような極めて多数の細胞も、もとをたどれば受精卵という一つの細胞に行き着きます。日々生死を繰り返している多種多様な細胞それぞれにも、もとをたどると親の細胞に行き当たります。それを幹細胞と呼びます。英語ではstem cellと呼びますが、stemは木の幹のことです。幹から多くの枝が分かれ大きな木へと成長していくように幹細胞からも多くの細胞が分かれていき、身体の組織や器官を形作るさまざまな細胞へと変化を遂げていくのです。幹細胞には胚幹細胞と成体幹細胞があります。胚幹細胞は英語でEmbryonic Stem Cellと呼ばれるためES細胞と呼ばれるのです。

 ES細胞は、胚から取り出されて作られます。胚は受精卵が成長を続ける初期の段階をさします。卵子と精子が一つになった受精卵は胎児へと成長していく途中で二つ、四つ、八つ…と分裂を繰り返し5、6日目には胚盤胞と呼ばれる状態になります。胚盤胞は直径0.1ミリほどの球状の形をしており、外側の細胞層である栄養外胚葉と、将来、体を作るもとになる細胞のかたまりである内部細胞塊を抱く胞胚腔から構成されています(上図)。内側の細胞塊はいずれ内胚葉、中胚葉、外胚葉へと成長し体のあらゆる細胞を形作っていく部分で、栄養外胚葉はそれらの胎盤を形成し、また胚を外界から隔離する袋を形成します。
 この内部細胞塊をほぐした後細胞を取り出し、これらの細胞をある細胞が増殖しても分化しない環境で培養するとES細胞ができあがるのです。
 
1.はじめに2.胚から作り出されるES細胞3.多能性と自己複製能力
4.進む治療への応用研究5.研究における課題6.研究推進に必要な社会との対話