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「聞き手」−ヒトES細胞を使った治療については先ほどのお話で出てきた免疫拒絶の問題が最大の課題ということですが、先生の研究室では、成体にある体細胞をES細胞化する研究を進められています。 |
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「中辻」 クローン動物を作る時には、成体の体細胞を核を除いた卵子に入れると、体細胞核がES細胞核のような状態にまで初期化して発生が始まるわけです。ただその成功率は低いわけです。この初期化というメカニズム、仕組みがわかれば、非常に大きな意義があるので、その研究が世界中で盛んに行われています。
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| 私の研究室の多田高と多田政子らが、体細胞をES細胞と融合させると、体細胞の方で初期化に近い変化が起きるということをつきとめました。この研究では細胞融合という手法を取っています。卵子は非常に大きな細胞なので核を取り除けるのですが、ES細胞は小さいため除核ができません。そこで、ES細胞と体細胞を細胞融合して、4倍体という通常の細胞の倍の染色体を持った細胞にします。その中で、もともと体細胞から来た染色体や遺伝子がES細胞のように初期化されていたということで、すなわちES細胞の中に体細胞を初期化させる因子があるということがわかったのです。これは初期化、すなわち核の再プログラム化がどのように起きるかという仕組みを調べる上で新しい画期的なツールになります。その仕組みを調べて究極的には卵子やES細胞を使わずに再プログラム化ができたらベストです。そこにたどりつくには何十年もかかるかもしれませんが。
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「聞き手」−4倍体の細胞というのはピンとこないのですが。 |
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「中辻」 我々も4倍体の細胞は研究のツールとして使うだけで、そのまま使うことを初めは考えなかったのですが、実際は通常のES細胞と同じような挙動をすることがわかりました。そこで今では、初期化の仕組みが完全にわからなくても目的の細胞に分化誘導するための細胞として使えるのではないかということを期待しているところです。4倍体細胞といっても例えば肝臓細胞は多くが4倍体なので、そんなに異常ではないのです。
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「聞き手」−自分自身の体細胞から作れるということになれば、免疫拒絶の問題をクリアできることになるのですか。
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「中辻」 そういうことです。4倍体の細胞を使う必要性は何かというと、融合してできたうちの半分は患者自身のゲノムでできているということになります。ただ、もう半分はES細胞だから他人のものに相当します。
このES細胞について遺伝子改変の方法を開発して成功すれば、拒絶反応に関係するHLAやMHCといった遺伝子を発現しないように壊すことができます。MHCがまったく発現していないような細胞であれば、それを移植すれば免疫拒絶を受けないのではと思うのですが、ナチュラルキラー細胞の攻撃を受けてしまうようです。ところが、この遺伝子操作して免疫拒絶を起こさせるよう作用する抗原性をなくしたES細胞と、ある患者の細胞を融合した4倍体細胞の抗原は患者と同じになるということで、この細胞を移植しても免疫拒絶が起きないと考えられるのです。そうなれば、ヒトES細胞株が1株あれば、卵子など使わずにだれの細胞からでもES細胞のような細胞ができるということで、そのための研究を進めようとしているところです。
これまでのところはマウス細胞を使った研究で融合細胞の分化能がES細胞くらいあるということを確かめた程度ですが、次には染色体の安定性なども調べないといけません。そしていずれは霊長類のES細胞を使った研究を行いたいと考えています。そのためには現在の私たちの研究室のような基礎研究体制だけでは難しいので、開発研究を含めた新たな研究体制をどこかのサポートを得て組めないか考えているところです。せっかくの価値ある研究ですので、これをぜひ実用化の技術にまで発展させて、日本発のオリジナルな基礎研究から生まれた基盤技術として基本特許を確保するなど今後の方針を検討しているところです。
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