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Science誌10月18日号のScience Scope欄に、「ショーン博士の論文撤回」というタイトルの短い記事が載っていました。次がそのほぼ全文訳です。 |
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"研究論文のデータをねつ造したとされるベル研究所の元研究員ヤン・ヘンドリック・ショーン物理学博士(32)および論文の共同執筆者3名は、ベル研究所が外部に委託した調査でねつ造が指摘された16本の論文を撤回することに今週初め同意した。一方、ヨーロッパの関係者は、ショーン博士に関して新たに二つの調査を開始した。
ショーン博士が在籍し物理学の博士号を取得したドイツのコンスタンツ大学の関係者は、同博士の博士号研究の見直しをはじめている。また、ドイツの主要な研究助成金交付機関のDFGは、ベル研究所に在籍中のショーン博士に交付された研究助成金がねつ造データの作成に利用されなかったかどうか調査中である。"
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ドイツ物理学界の"神童"あるいは若き天才的物理学者とまで称されたヤン・ヘンドリック・ショーン物理学博士(32)は、ドイツの代表的な研究助成機関の助成金を受けて1998年に世界に名だたるアメリカのベル研究所にポストドク研究員として赴任し、固体物理学関係の研究に従事しました。わずか4年の短期間に有機エレクトロニクス、超伝導、ナノテクノロジーの分野で「革命的な」新発見を次から次へとものにし、その研究業績を90本以上の論文にまとめて発表し、同分野の研究者や学界を驚嘆させました。特に、2001年には平均して8日に1本の割合で論文を発表し、これは物理学の研究分野ではほとんど例のない精力的な多産ぶりでした。また2ヵ月に一つの割合で新研究分野を切り開いたとも評されました。 |
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ショーン博士の研究論文のうち10本余りは、2001年から2002年にかけてNatureやScienceに掲載され、論文に載っている写真が両誌の表紙を飾るまでにいたりました。ところが今年の4月になってアメリカのある研究者が、Natureに掲載された分子スイッチに関する論文に載っているのと同じ図面(グラフ)が、発行されたばかりのScienceに掲載のまったく別のデバイスに関する論文にも載っていることに気づきました。また、5月9日にはコーネル大学のマッキーン物理学教授が、ショーン博士が発表した別の複数の論文中にある図面を、比較検討して明らかな重複があることを発見しました。同教授は翌日ベル研究所にこの事実を連絡し、同研究所はマッキーン教授以外からも続々と寄せられた「データねつ造疑惑」を調査するために、スタンフォード大学のビーズレイ教授(電気工学)を委員長とする独立の調査委員会(5名)を発足させました。 |
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調査委員会は9月25日に調査報告書を公表し、データねつ造疑惑がもたれている25本の発表済み論文中、少なくとも17本の論文で実験結果に関するデータの偽造ないしはねつ造が証拠づけられたと結論づけました。まさに「偶像、地に堕ちる」の感があり、事実10月3日号のNatureは「昇竜の勢いのスター、地に落ちる」との記事を載せ、Science10月4日号の関連記事は「神話の中のイカロスは高く飛んで太陽に近づきすぎたために蝋の翼が溶けてしまったが、これと同じようにヤン・ヘンドリック・ショーンの飛ぶ鳥の勢いの研究実績も地に堕ちてしまった」との書き出しで始まっています。
この「天才」研究者による論文ねつ造疑惑が明るみに出て、ベル研究所がなぜ不正を見抜けなかったのか、論文の共同執筆者に責任はないのかといった疑問や批判が出ています。特に、世界で最も権威ある科学誌と自他共に認めるNatureやScienceが、こともあろうにこのようなねつ造論文を次から次へと競うように掲載したことに対する批判が相当強いようで、一部の研究者は両誌の論文掲載のための審査姿勢を問題視し、研究内容の質や正確さよりも「話題性」を重視しすぎているのではないかと疑問を投げかけています。
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このような批判に対し、また調査報告書の発表を受けて、Nature10月3日号は「詐欺的な科学研究に関する反省」と題する巻頭論説(opinion)で巷の批判に答えており、Science10月18日号も「ショーン事件で次に取るべき策」と題する編集主幹の巻頭論説(editorial)で掲載誌としての立場から見解を述べています。さらにNature10月24日号はニュース特集(news
feature)欄に「掲載してはたたかれて....」と題する記事を載せ、掲載論文を選択する方法の問題点などを詳しく検証しています。これらについては別に機会を改めて報告したいと考えています。 |
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