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Science誌11月15日号のニュースは、国連の国際法専門部会がヒトクローニングを禁止する国際条約ないしは協定の立案をめぐって、その部分禁止を主張する独仏勢と全面禁止を求める米・スペイン勢とが対立し、最終決定が来秋まで延期されたと報じています。 |
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ヒトクローニング(human cloning)とは、具体的にはヒトのクローン胚作製を指しています。ヒトクローン胚の作製は、これを利用してヒト胚幹細胞(ES細胞)を作り出し、再生医学の研究および究極的には病気の治療に利用することを目指しています。この研究や治療を目的としてヒトのクローン胚を作製することを一般に治療目的のクローニング(therapeutic
cloning)と呼ばれていますが、Scienceの記事はreasearch cloningというわたしにとっては目新しい言葉を使っています。ここでは「研究・治療目的のクローニング」と呼ぶことにします。
他方、ヒトクローニングで人工的に作ったクローン胚を代理母の子宮に移して妊娠させるとクローン人間を誕生させることも可能とされています。このクローン人間を誕生させる目的でヒトのクローン胚を作製することは、生殖目的のクローニング(reproductive
cloning)と呼ばれています。しかしクローン人間を誕生させることは、生まれてくる子供の人権など道徳上、倫理上重大な問題をはらんでいるのみならず、代理母と産まれてくる子供の双方にとって医学上も大きな危険を伴うとほとんどの研究者が考えています。しかし、例えばイタリアのセベリノ・アンチノリ(Severino
Antinori)医師は、11月下旬にローマで記者団に、来年1月にはクローンべビーを誕生させると発表しています(→短信8)。真偽のほどは謎ですが、クローン・ベビーの誕生をほのめかしている新興宗教団体や人物が他にも存在します。
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そこで、ほとんどの国が法律で生殖クローニングを禁止しているのですが、問題はもう一方の研究・医療目的のクローニングをどうするかです。研究や治療目的であっても、人の命の萌芽である受精卵や胚をいたずらに壊すことは許されないという主張も根強く存在します(→参照)。そのため研究・治療目的のクローニングを含めてヒトクローニングを全面的に禁止している国もあります(例えば、ドイツ)。しかし、英国、シンガポール、オランダ、日本のように生殖クローニングのみ禁止し、研究・医療目的のクローニングは一定の条件付きで認める(=部分的禁止)という国が実際には多いようです。ちなみに、クローン羊ドリーを誕生させた研究のリーダー役であったスコットランドのウィルムート氏は、ヒト胚幹細胞株を作製するためにヒトクローン胚の研究を始める予定であることを明らかにしています。日本でも京大再生医科学研究所の中辻教授のグループが、国内で初めてこの研究を始めます(→ヒトES細胞作製に向けて準備整う)。他方、後述の米国を含めて、全面禁止か部分禁止かで意見が対立し、法律の制定にまで至っていない国も少なくありません。 |
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Scienceの記事によれば、クローン人間問題の重要性と緊急性からフランスとドイツは、クローン人間を誕生させようとする一部グループの取り組みを阻止するために国連がヒトクローニングを禁止する何らかの措置を講じるように要請することを2年前に明らかにしました。問題の緊急性にもかかわらずヒトクローニングに関する各国の法規制がばらばらであるので、国連主導の国際法によって最低限の規制をかぶせることを意図しているようです。 |
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独仏の要請に基づいて、上述のように国連の国際法専門部会で禁止条約ないしは協定の立案が検討されてきたのですが、全面的禁止か部分的禁止の対立が表面化しました。国内法では全面的に禁止しているドイツやその方向にあるフランスを含む22カ国は、ヒトクローン胚の問題に関しては各国の見解が大きく分かれているために全面的禁止に向けた交渉には時間がかかりすぎると主張し、広範な禁止案の実現の可能性を残しつつ、とりあえず生殖クローニングのみ早急に禁止しするように提案しました。ところが、米国、スペインをはじめとする37カ国は、研究・治療目的のクローニングを含めてすべてのヒトクローニングを禁止する全面的禁止のみ支持するとして譲りませんでした。 |
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結局、専門部会は、ヒトクローン胚作製の全面的禁止か部分的禁止かについて合意に達することができず、この問題に関する審議を来年秋まで延期することを10月8日に決め、またこの問題をさらに協議するための会議が来年春に韓国で開催されることになりました。 |
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独仏両国は、「生殖クローニング禁止へ向けて動き出せなかったことは、クローン人間誕生に向けて動いている関係者に門戸を開け続けることになる」との声明文を発表し、ドイツ代表団は、「ドイツはクローン実験を全面的に禁止するという考えに賛成であるが、生殖クローニングの禁止が現実的なゴールであると考える」と述べ、「見解の相違は、どのように禁止して行くかというに過ぎない。ドイツの国内法ではあらゆる種類のクローニングを禁止しているが、国連ではそのような決議が可決される見込みがなかった」と残念そうです。 |
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米国にはクローニングを規制する連邦法はまだ存在せず、民間のいくつかの研究グループが研究目的のクローン実験を続けています(→バイオ企業のACT社、ヒトのクローン胚の作製に成功か)。今春、議会上院でも国連で見られたのと同じような意見の対立が原因で、ヒトクローニングの全面的禁止ないしは生殖クローニングのみの禁止を目的にした法案を可決しようとする取り組みが失敗に終わりました。ただし、中間選挙の結果、共和党が上院で多数党となったので、状況が変わる可能性があるとみられています。 |
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○ 言葉と用語
* ヒトクローニング: human cloning
* 治療目的のクローニング: therapeutic cloning
* 生殖目的のクローニング: reproductive cloning
* 研究目的のクローニング: research cloning
* ヒトクローニングの全面的禁止: a complete/total ban on human cloning
* ヒトクローニングの部分的禁止: a partial ban on human cloning
なお、英語のcloningは「クローン作製技術/作製法」の意味で使われます。 |
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