増え続ける糖尿病患者

 現在、日本の糖尿病患者は成人人口の7%を超え、予備軍を含めると16%に達する。糖尿病と肥満との関係をみると、アメリカ人の糖尿病患者は力士のような体系をした人が多いが、日本では太い体型は見られないというのが特徴だ。インスリンの分泌を見ると日本人は米国人白人の半分くらいでここでも大きな違いがある。糖尿病患者が亡くなる原因を調べると、米国では約半分が虚血性心疾患によるもので、日本では虚血性疾患は増えたとはいえアメリカの3分の1くらいにとどまっている。ところが腎臓が悪くなって亡くなる人はアメリカの3倍ほどになる。

 このように同じ糖尿病でも病気の状態に違いがある。この原因はまだよくわかっていない。脂肪摂取量については欧米化して増えたとはいえ60mgで米国の半分強だ。ところが、増加率を見ると過去40年間に3倍くらいになっており、急激な食生活の変化が病気の主な原因になっていると考えられる。糖尿病の受療患者は増えており、高血圧性疾患に次ぐ第2位で、2百数十万人という統計が出ている。年代別の患者の割合だが、50代を過ぎると非常に多くなる。2010年を過ぎると高齢者で大変な急増が予想されており、全体の受療者数は400数十万人と予測されているが、すでにその予測を上回るペースで推移しており、このままだと500万人を超えるのではと心配している。また、糖尿病の医療費だけで1兆2000億くらいになっている、また、糖尿病だけではなく、4種類の合併症を伴うと医療費は通常の糖尿病患者と比べて3倍要するという。健康面、医療費の面から糖尿病を起こさないことが非常に重要だ。


生活習慣の改善が発症を防ぐ

 糖尿病はある日突然になるわけではなく。正常な人が境界域という病気になる一歩手前の状況を経て糖尿病になる。遺伝的な要因もあるが、どんどん重症化していく過程では生活習慣が大きな影響を与えるので、これを改善すれば糖尿病にならないと考えられる。

 米国で大きなプロジェクトがあった。3000人あまりの境界域の患者さんに対してそのまま何もしない、薬の投与、生活習慣改善(体重減少、運動)の3群に分けてフォローしたところ、何もしない群は30%以上が発症し、生活習慣改善の群が糖尿病の発症が一番少なかった。民族別に比べると、アジア系の人はもともとなりやすいのだが、放置したままより3分の1に妨げられた。アジアでは中国での研究があり、500人あまりに対して食事療法、運動療法、二つを合わせた療法で約4割が抑制された。この大規模研究の結果から、境界域での対処は発症を抑制し、生活習慣の介入は食事療法、運動療法ともに有効で、指導の継続が効果的であることが確認されている。糖尿病予備軍に積極的に介入することで発症を予防することができるということになるわけだ。


日本人独自のエビデンスを

 冒頭に述べたように、日本人と欧米人では病態生理が異なるのだが、日本人の治療指針作りに用いられている論文の大半が欧米のものから引用されている。日本人の検証結果、エビデンスがないからだ。そこで、わが国独自のエビデンスを集めて健康づくりの指針を出すことが大事であるという考えのもと、昨年10月に健康づくり支援システム検討委員会が発足した。当初は健保組合、企業から参加を募り、いずれは多くの市民の参加を募りたい。個々の生活習慣のデータ、検診データを解析して、関連する食品、診断機器などのメーカーとタイアップし、個人に応じた生活指導を行うことによってどれだけ発症を抑制できたかをエビデンスとして示して市民の健康づくりを増進させたい。